2022-7-11
矯正歯科治療非抜歯矯正でゴリラ顔になるって本当?
Contents
抜かないとゴリラになるというある意味定型文
当院の機能矯正で抜歯矯正後の後遺症の相談を受けるのことが
最近特に多くなった印象を受けます。
抜かないと出っ歯になる
抜かないとゴリラ顔になる
抜歯矯正を受けたまたは相談に行った方は一度はこの決まり文句を聞かれたことがあるのではないでしょうか?
ゴリラとはつまり
歯が前に出すぎてしまい上の歯も下の歯も出てしまう
口がゴボるということです。
歯並びが悪い場合歯が基底となる顎骨より歯がはみ出しているから並ばない
というのはほぼどの方でも間違いありません。
歯並びを治すためには歯が並ぶ基底と歯の大きさを合わせなければ並ばない
それは物理的に明らかです。
問題はその物理的スペースをどのように確保するかということなのです。
歯並びを治すのかかみ合わせを治すのか
そこでどうやってスペースを空けるか
一つは歯を抜いてスペースを空ける
いわゆる抜歯矯正となります。
抜歯矯正の場合
当然歯を抜けばスペースはできます。
抜歯矯正も終了直後はとてもきれいに歯が並んでいます。
歯を抜いてスペースを確保した後はいかにその位置に歯を移動させるか
歯は倒す、起こすと言った傾斜移動は簡単にできるのですが
歯を水平に動かす水平移動はなかなか難しい。
その為矯正専門医はこの水平移動のテクニックを磨きます。
そしてすべての歯をまっすぐにして水平移動をして模型のように
きれいに並べるわけです。
歯をまっすぐにするのが抜歯矯正の主な目的です。
確かにゴリラにはならないんですけどね。
非抜歯矯正の場合
では抜かない矯正はどうなのでしょう
抜かないで歯が並ぶスペースを空けるには
どうにかして場所を確保しなければなりません。
一番一般的には
6番をつまり第一大臼歯を後ろに送り込むことによって
前側のスペースを作るのです。
デイスタライズというテクニックで
デイスタライザーとかペンデュラムとかという装置が良く使われています。
ペンデュラム
これをしないで
は曲がっている歯に強引にブラケットを接着してまっすぐにしようと思えばできます。
ところがそもそも場所が足りないのですから
歯は場所を求めてずれます。
前歯は場所を求めて前にずれます。
歯が動くときは歯根の表面積が少ない歯が動くので当然前歯が動くからです。
前歯が前に飛び出せばよく聞くゴリラ顔になるというわけです。
もちろんこのことはよく理解されているわけですから
初期の非抜歯矯正ではともかく
すぐに6番の後方移動というテクニックが応用され
この場合も後述のような問題が起こるのですが
とりあえずゴリラになることはありません。違うことがおこります。
何故でしょうか?
当院の患者さんは一人も出っ歯になっていない
当院で矯正治療をされている患者さんの一割程度は抜歯矯正の不調を訴えた方の再治療です。
皆さん言われるのは説明を受けた際に「抜かないと出っ歯になってゴリラのような顔になる」と脅されたそうです。
ところで当院の治療例の方はほぼ全員抜いていないのですが出っ歯になっているでしょうか?
うまく行った人だけを出している?
疑問に思うなら残りすべての症例をお見せしますからどうぞおいでになってください。
当院の症例で抜かずに出っ歯になった人は一人もいません。
初診時は口唇が閉じても前歯が飛び出していました。
治療完了後、口唇はきちんと閉鎖して全体にいい感じになっています。
機能矯正を手がける前は
歯が悪くなる?矯正治療
矯正した人は歯が悪いなーっというのが臨床をしていての実感でした。
もちろんそうならないようにしっかり指導している医院もありますし
しっかりした患者さんはブラケットを着けても悪くならないように
頑張って歯磨きをしています。
しかしももともと虫歯のない歯を4本(親知らずも入れれば8本)
抜いてしまっているから戦力は約17%減じてしまっています。
維持する歯が少なくなってしまっているわけです。
私は昔は矯正と言う治療に懐疑的でした。
というのも歯科医になってから矯正治療後の患者さんを何人も診たのですが
みなさん何かしら矯正をしたと言う事による不具合を抱えておりました。
これならもともとの歯並びの方が良かったんじゃないか?
いつしかそう思うようになりました。
矯正しないと歯が無くなっていく
しかし臨床を重ねているうちに
歯並びの悪い人は中年期以降どんどん歯が無くなっていく、と言う事に気が着きます。
補綴をやってみると分かるのですが歯ならびの悪い人の前歯に前装冠をいれると咬みあわせの調整にものすごく時間がかかります。
模型上でどんなに良く調整しても口の中に入れるとなぜだかわからないけど高くて咬めないのです。
つまり歯並びの悪い人では咬みあわせ軸が多方向に発生し制御不能な不正な力が
歯に入り続けてしまうのだろうということが推測されました。
つまり機能がおかしいののです。
歯並びが悪いのも個性のうち
なんて考えていたのですが経験を積むとやはり歯は補綴学的に正しい位置にあるべきだ
歯がまっすぐに並び
上の歯は下の歯をカバーして
歯の頭と溝がかみ合っている。
これが正しい安静位置でのかみ合わせです。
機能を治して少しでも長い間自分の歯で噛めるお口を実現しよう
と考えが変わってきました。
かみ合わせのキーになる歯があるらしい
しかしながら学校で習った4番を抜いて矯正をする
という手法で治療した患者さんがみな正しいかみ合わせになりハッピーに暮らしているかというと「そうでもないぞ」というのが臨床していての実感です。
何がダメなのかに関しては以前の投稿で詳述してありますのでそちらを見ていただくこととして
実践面では口の中で二か所だけ動かしてはいけない
あるいはこれだけは正しい位置になければならないアンカーのような歯があるのではないかと考えていました。
それは3番つまり糸切り歯と6番、第一大臼歯の二か所かみ合わせで考えるなら4か所です。
八重歯は天性の授かりもの?
不思議なことにひどい八重歯の人を治す時に飛び出している糸切り歯は歯列からは飛び出しているもののお顔の状態を見るとちょうど良い位置にある人が殆どと言う事に気が着きました。八重歯がかわいいのはこのせいだと思われます。
またよほどのことがない限り
6番つまり第一大臼歯は良い位置に萌出していると言う事にも気が着きました。
もっとも最近6番がきちんと萌出しない子も散見されるようになっています。
これはなかなかに難症例でだいたいの矯正治療は6番は定位置に生えていることを
前提に理論が構築されています。
この6番を定位置まで萌出させるテクニックは寡聞にして存じません。
6の異所萌出これは超難症例になります。
つまり6が正しい位置にあることを確認すればあとは3を基準に歯列を整えるときれいなかみ合わせが完成することとなります。
その6が定位置に無いとなるとその後はすべて応用変化で対処しなければならないからです。
なぜなら6が定位置に無いとそもそもかみ合わせが完成しないのです。
そして6にこだわることが機能矯正の良い結果につながっている。
どこに6があればよいかは機能矯正の分析によって解析されています。
例えはえていなくてもいちさえ分かっていれば何とかすることはできます。
問題は正解の定位置をしれそこを守ることなのです。
現症にとらわれてそれを安易に動かしてはなりません。
糸切り歯を動かさなければ出っ歯にならない
と言うのは簡単ですが実践するのはとても大変ですよ。
そこをうまいことやり切るのが機能矯正の妙味なわけです。
この基準で治す限り抜かなくても出っ歯になることはありません。
良く歯並び咬みあわせは生まれ持ったものと言われることがありますが
私に言わせれば「糸切り歯こそ、その人の個性」なのです。
ですから仮に4を抜いても糸切り歯の位置が変わらなければ何も問題は起こりません。
4をぬいて糸切り歯を後ろにひっぱるから不快症状がおこるのです。
逆に4を抜いたスペースを作るために3を前に送り出せば
当然出っ歯になります。またゴリラのような顔になります。
抜かないと出っ歯になるは一面真実でもあります。
それは「そのような矯正をしてしまえば」という前提条件のもとです。
「抜かないと出っ歯になると言うのは嘘」
と書きましたが正確に言うなら
「私が矯正すれば抜かなくても出っ歯にはなりません」
と言う事です。
6番を後ろに送ってしまう「非抜歯矯正」で起こること。
一般に「非抜歯矯正」と言うのは6番を遠心移動
つまり後ろ側に送り込んでスペースを作ると言う手法を取ります。
これはアメリカで開発された技術なのですが
白人の顔と言うのは前後方向に長円形をしています。
つまり前後方向に大きさの余裕があるから6番を遠心移動つまり後ろ側に送り込んでも
問題は起こりにくいのですが
日本人の顔はまん丸でしかも上あごは計測してみると小さい人が大変多いのです。
スケルタルダイアグラムという
かみ合わせのバリエーションの概念図ですが
上の矢印が上の顎の位置
下の矢印が下の顎位置
右側の弧状の曲線が顔の前面の位置です。
左上の角にある場合が正常で
そのほかは何らかの不正咬合があった場合です。
上の矢印が前にあれば出っ歯
下の矢印が出ていれば反対咬合になります。
このうち
日本人に多いのは右下の枠内の左側
上も下も小さすぎるというケースなのです。
このケースでは抜歯をしたしまうと
小さな顎に小さな歯列を作ることになり
歯は並んでもそのほかのたくさんの問題が起こる場合があります。
またゴリラになるのはその隣の
上も大きい
下も大きい
と言ったケースです。
元々がこの状態であれば抜歯をしても6を後方に送っても問題ないようです。
ようですというのは
私は矯正を始めてからこの上も下も大きいというケースの方には
お会いしてことがないからです。
全ケースの9割がたが上も下も小さい方です。
それだけ日本人と抜歯矯正が
相性が悪いといことなのでと思っています。
非抜歯矯正は4抜歯より予後が悪い場合がある
先ほど6番と3番は動かしてはいけない
と言いましたが
最悪なのは6番を過剰に後ろに移動してしまう事で
しかもその前はそもそも小さすぎるわけですから歯はならんだとしても
とても奇妙なお顔になります。
ちなみに4抜歯矯正の再矯正はようやく最近できるようになりましたが
6番を後ろに送ってしまった矯正の再矯正は
いまだ手法が見当たりません。
6を手前に引く手法がないからです。
3を前に送ればゴリラ6を後ろに送ればカッパ
いぜん非抜歯矯正の権威が業界雑誌にケースを出していましたが
どの患者さんも何故か「カッパ」のようなお顔になってしまっていました。
また最近着手した患者さんが非抜歯矯正の医院で症例を見せてもらったところ
「なんだか出っ歯になっていて」
と当院に来られた方がいました。
その方もなんか不自然で河童っぽい感じでした
つまり普通の着想で非抜歯矯正をすれば
ゴリラになるか、カッパになるか
この二つの選択肢となるということです。
機能矯正ではゴリラにもカッパにもならない
機能矯正ではこのどちらも起こりません。
なぜなら私の機能矯正はそもそも着想が違うからなのです。
先ほどのダイアグラムで言えば基底の顎骨を整えて
左上の正しいかみ合わせに近づけるという治療をするからだと考えています。
もちろん治り方は個人差があり必ずしも100点満点になるわけではありませんが。
他の矯正と同じなのは
歯を真っ直ぐにするときに使うブラケットだけ
とも言えると思います。
3番と6番を正しい位置に導き
歯をきれいに整えると
ホームページでご紹介している症例のようなとても柔らかい良い表情の笑顔が生まれるわけです。
最後に
いろいろ述べてきましたが
一つ忘れていただきたくないのは
機能矯正は後始末のための技術ではないということです。
抜歯矯正でも非抜歯矯正でも術後何事もなく暮らしている方ももちろんいます。
問題は適応ではないにもかかわらず抜歯してしまった方です。
機能矯正は適応を見極めその方に会った治療法を見極めるところから始まります。
そして一番威力を発揮するのは
まだ永久歯が生えそろわないうちから将来を予測し
歯並びを悪くせずに成長させることができた時です。
子供の歯並びが気になりましたら
さすがに1歳2歳では早すぎると言えますが
ぜひ早めにご相談ください。
歯が生えそろわなければなにもできない抜歯非抜歯の歯列矯正と
骨格を一番に考える機能矯正との一番の違いは
着手可能年齢なのかもしれません。