2018-7-2
歯科医師の本音アライナー矯正(3)
アライナー矯正について
着脱装置を使用した機能矯正をやっていると「このまま装置だけで治せないか」というご希望にしばしば遭遇します。
機能矯正装置は主に顎骨の成長を促したり左右非対称を改善したりするもので歯を並べる能力を持っていません。
従って機能矯正装置で骨格的な問題が解決しても歯列不正は残ったまま、または、子供さんの場合だと歯が萌出する場所的な問題が解決しても曲がったままで生えてきてしまう事もよくあります。
そこで歯列をきれいにするためにはおなじみのブラケットとワイヤーが必要になります。
歯のねじれや角度の狂いは正確に調整のできるブラケットが最も適しているからです。
ごく例外的に機能矯正装置だけできれいな歯列が完成することもありますが10人のうち一人二人ですね。
それもたいていは6歳くらいからはじめてこつこつ治療をすすめた人で、一年二年機能矯正装置を使ってきれいさっぱり治ると言う例は見たことがありません。
中にはある装置を使えばなんでも治ると主張している人もいますがどうなんだろう、と思ってしまいますね。
できないことに希望を抱かせて結局裏切ってしまうより、最初からいちばん難しい覚悟をしていていただいて結局それより軽くすんだと言うほうが患者さんの満足度は高いように思うのですがどうでしょうか。
さてそこでアライナー矯正です。
ブラケットを全く使わずに歯をきれいに並べられる着脱装置はアライナーくらいしかありません。
前回、老舗のインビザラインと新進のアソアライナーの二種類のご説明をしました。
どちらも一長一短がありますが、今回説明するSmiileTRUというシステムはいわばインビザラインとアソアライナーの中間を行くようなシステムです。
商品のキャッチは今までにない画期的なんですが、そこまでは言い過ぎかもしれません。
インビザラインに似ていて初診一度の型取りで最終までのアライナーを作成しますが、決定的に違うのは3Dプリンターで実現化した模型の上でアライナーを作り、それを模型ごと納品してくれるという点です。
つまりアライナーをなくしたり壊したりしても模型があるので再制作できるのです。
欠点は価格でアライナーが5~6枚程度で終わるケースでは割安になりますが、もっと枚数のかかるものでは逆に割高になります。
また枚数のかさむ難しいケースでは、初診一回の型取りではさすがに難しく、途中で型取りと計画の見直しが必要になることがあるということです。
どちらにしても強制的に歯を動かせるブラケットワイヤーに比べて、アライナーは歯にかかる力が弱く動き方も緩慢で即応性はブラケットワイヤーに代わるものではありません。
ただ矯正治療でいちばんのネックとなる歯にブラケットを付けると言う事が回避できるのでアライナーなら矯正治療をやってもよいという患者さんが少なからずいらっしゃいます。
SmileTRUのもう一つの特徴は診断と設計をアメリカの矯正専門医がやっていると言うことがあり、一つの安心材料ではあります。
もともとアメリカでもセレブの間ではブラケット(あちらではブレースと言います。)を使わないで矯正を完結させるというのがステータスだそうで、脱着装置で治療を完結できるアライナー矯正は選択肢として大きいようです。
実際機能矯正で大きな問題を解決してしまえばあとはアライナーで仕上げるのもありでというわけで、当院のスタッフの場合はまず機能矯正で治せるところまで治してその後SmileTRUで治療を続けて完治に至らせる流れになりました。
これが機能矯正終了時のお口の中です。
前回投稿の初診時写真と見比べていただければかなり良くなっていることが観察されると思いますがまだきれいな歯列というわけにはいきません。
このあたりが機能矯正装置の限界ですがここでワイヤーを使えればわけもなく治せてしまいます。
それがダメと言う事でSmileTRUを使いましたが
ここまで治すことができました。
すこしクラウディングが残りましたが問題になるようなものではなくご本人もいたって満足されていました。
第一選択ではありませんがご希望によってはこのような選択肢もあるということです。
アライナー矯正をお考えの方も機能矯正と組み合わせることでかなり治療幅は広がりますのでご相談ください。