なぜ小児矯正は6歳から継続するとうまく行くのか?
早期抑制矯正について
矯正治療と言うと皆さん歯が生えそろってからやるもの
という印象をお持ちだと思います。
確かに歯列矯正は歯がすべて生えていなければてきません。
では歯がはえそろっていないうち不正咬合を予防するにはどうしら良いか?
そもそも歯がちゃんとした位置に生えてくれば良いわけです。
その為には?
つまりはそもそも歯が全部並ぶお膳立てをしてやればいいわけです。
たいていの場合歯がきちんと生えてこない原因は顎の大きさに対して歯が大きい
または、歯の大きさに対して顎が小さいというのが原因です
顎の大きさと歯との調和がとれるようにしてやればいい
ということになります。
どうするのでしょうか?
一時乳歯にフルブラケットを着ける
という治療が流行ったことがあります。
乳歯を通して顎の大きさを整えようということだったようです。
これはうまくいかないんだろうな、と思っていたところ
最近はこの話をほとんど聞かなくなりましたから
やはりうまくいかなかったのでしょう。
乳歯というのは永久歯にはない特徴があります。
それは根が溶けて生え変わるという特徴です。
乳歯の根は下から永久歯が上がってくると根を溶かす細胞が出現して溶けていく仕組みになっています。
この刺激は正しい永久歯の萌出だけでなく
何らかの刺激が根に入ったことによっても発生する場合があります。
この原理は遺伝子によって操作されているようで
永久歯が先手欠損でも乳歯の吸収脱落だけが起こる場合があります。
つまり永久歯による物理的刺激ではなく
そこにある遺伝子のよって活性されているらしいのです。
当然歯にブラケットを着けるなどの物理的刺激が
歯冠にかかることによっても活性されます。
従って乳歯にブラケットを着ければ顎のほうに力がかかる前に
乳歯の脱落が早く起こってしまうはずです。
これでは顎の形を整えることはできせん。
これを考案した先生も顎の形を整えることの重要性は分かっていたのだと思いますが
方法が違うと思うのです。
歯列不正が起こるときは歯が生えてくるときにすでにむちゃくちゃに生えて来ます
この時にきちんと歯が生えるようにしてあげれば後々の歯列矯正は少しの手間で行う事ができます。
顎の形を整えてきちんと歯が並ぶようにしてあげる。
この治療こそが機能矯正なのです。
成長期の子供は成長への刺激の感受性が高く成長不全があった場合
正しい方向に導くのは比較的容易です。
歯が生えてしまえばすでに成長は終わってしまっているわけですから歯を動かして並べることはできても成長不足を補う事は容易ではありません。
ですから歯列矯正では歯を抜いて歯を動かすスペースを作らなければならないのです。
子供のうちに不正咬合の可能性を見抜いて治療を行っていく治療を「早期予防抑制矯正」と呼びます。
私の機能矯正は本当は「早期予防抑制矯正」を得意としています。
不正咬合は何故おこるか?
不正咬合を防ぐためにはなぜ不正咬合が起こるか理解しなければなりません。
またそれにより不正咬合のわずかな予兆を見抜き親御さんへの適切な助言と治療方針を出せなければなりません。
以下は重症順に記載してありますので頻度がこの順で起こるわけではありません。
最も身近で頻発するものは
口呼吸です。
1)先天異常
機能矯正の歴史を紐解くと先天異常との取り組みにさかのぼります。
ピエール・ロバン症候群
下顎の小顎症を伴う事が知られている先天異常です。
鳥貌症ともいられあたかも下顎が無いような顔となります。
機能矯正の歴史はピエール・ロバン症候群の治療から始まった
ともいわれています。このとき治療用に開発された装置が改良され現在の機能矯正装置になりました。
第1、第2鰓弓症候群
顔面が左右非対称となる先天異常です小耳症を伴うなど主な治療は形成外科となり歯科はその後続発的な治療をすることになります。
私の師匠の岩附が治療経験を持っていますが形成外科での治療に続いて機能矯正治療を行い良好な結果を出しました。
以上不正咬合を伴う著名な先天異常をご紹介いたしましたが
どちらも非常に早期に化骨延長手術をしなければ治りません。
化骨延長とは、太い骨の真ん中を切断して
クランプをかけてその間を少しづつ開き
開いた隙間に骨ができるのを待ち、またそこを切断して伸ばすを繰り返し
目標の長さになるまで伸ばすという手術で
通常数か月
子供の顎の先天異常の場合数年かかる大変な手術です。
後天的に起こることはありませんので少なくとも普通に生まれた子供は心配する必要は
ありませんが骨格を治す機能矯正の原点となるもののためご紹介させていただきました。
不正咬合をある意味先天異常の一つと捉えるなら当然顎骨の成長力のある小児のうちに治療に着手する方がわざわざ成長力が無くなってしまうまで待つより治りがいいのは当然だろうと思います。
また近年歯の先天欠損がとても多くみられるようになりこの場合は早めに手を打たないといつまでたっても歯が萌出してくることはありません。
大きくなってしまうと顔面の変形などを併発してしまう事になります。
2)習癖
指しゃぶり
乳児の政祖先のための原始反射、哺乳反射
指しゃぶりはお母さんも気にされ早く治したいと思われる習癖の一つですが6歳になって永久歯が生え変わり始めるまでに解消すれば問題はありません。しかしながら私の症例で中学生くらいまで指しゃぶりを続けた方を見たことがありますが、この方は極端な上顎前突になり下顎の前歯は後方に倒れていると言う極めて難しい状態になっていました。
うつぶせ寝
うつぶせ寝を推奨する育児法があるようですが少なくとも健康な上顎の発育にはうつぶせ寝は勧められません。私が診た人で極端な上顎発育不全の方はみなうつぶせ寝だったからです。中にはうつぶせ寝の解消に強く抵抗されるお母さんもいましたが何とか説得して治療に成功しました。
3)遺伝
親御さんが不正咬合だとたいていお子さんも不正咬合になりそのタイプも似ています。
またご両親は歯並びがいいのに子供が不正咬合になったと言う場合何代か遡ると
そのような不正咬合の方がいたなどと言う事もあります。
4)呼吸
アデノイドの腫脹などがあり鼻呼吸ができず口呼吸になると歯並びは極端に悪くなります。歯は自ら咬みあう事によって位置を決めていくからです。咬みあっていないために歯がどこに行ったらいいかわからなくなくなってしまうのです。
最近アデノイド顔貌がイケメンになる、またはイケメンはアデノイド顔貌という話が広がっているみたいです。
これは調べてみて意外だったのですが皆さんはご存じでしたか?
確かに面長は最近の流行りなのかもしれません。
ジャニーズの二宮さんとかはアデノイド顔貌なんでしょうか?
が一つ条件があると思います。
面長で歯がきれいに並んでいるということです。
通常口呼吸の場合歯並びは悪くなります。
何故なら常に口が開いている状態になるためかみ合いがきちんと作られないのです。
そして常に口が開いているために上下に長い顔になります。
不思議なことにかみ合いがないと歯はきちんと並ばないことが多いのです。
アンガールズの田中さんもアデノイド顔貌ということのようです?
機能矯正治療に当たっては口呼吸の改善を図るよう常に気を配ってます。
5)原因が特定できないもの
大半の矯正の患者さんはここに分類されます。
不正咬合は様々なことで発生し病態も一様ではありません。また致命的なものではないので病因論的に予防するという研究がなされていません。
従って不正咬合に有効な予防は確立されていません。
原因云々いうよりとにかく早く治療に着手することがいちばん有効なのです。
不正咬合は様々な要因で発生しますがなってしまった以上治さなければ自然治癒はありません。
普通の親御さんは子供が不正咬合になることを望んではいないと思います。
(もっとも中には歯が一本生えてこないくらいなんでもないと言う方もいましたが)
小さなうちからしっかりと診断し各成長段階に適した治療を行う事によって
歯を抜くなどの無理な治療することなくきれいな歯並びを作ることができるのです。
症例
過蓋咬合を機能矯正で治した症例
7歳になるくらいの時に来院された患者さんです。
ここまでのディープバイトはさすがに病的と思われ治療に着手しました。
側貌をみるとかなりの下顎後退が認められます。
唯一救いだったのはこの子は上顎の発達があまり悪くなく
下顎の後退を治療すれば治ると思われました。
下顎は身長が伸びるとともに次第に大きくなっていきますから上顎の発育を取り戻すよりはやりやすいともいえます。
バイオネーター使用で治療
約5年間バイオネーターを使い続けることによって
以下のような治療結果を得ました。
しっかり下顎も発達し口唇の状態から鼻呼吸が確立していることが確認できます。
このお子さんはブラケットとワイヤーを使った後半治療を希望されませんでした。
中切歯に空隙があるのはそのためですが
本人もお母様も特に気にしておられませんでした。
またしっかり鼻呼吸が確立されたためか学力も向上し
中学受験でよい結果を納めることができました。
アデノイド顔貌を機能矯正~バイオプログレッシブで治した症例
典型的なアデノイド顔貌です。
当然歯並びは良くありません。
口呼吸で口唇の閉鎖力が弱かったため
前歯がきちんと萌出しませんでした。
治療後
バイオネーターからバイオプログレッシブの連続治療できれいに治りました。
お口もきちんと閉じて口呼吸は改善しています。
きれいなかみ合わせを作るとあとは自然な成長で
どんどんかみ合わせができていきます。
6歳から治療を始めることの意義
6歳から12歳の長期間機能矯正を続けるというのは
気の遠くなる時間のように感じるかもしれません。
6歳から12歳は成長の準備期間
しかしこの期間はその後の人生を健康に生きていくための
とても大事な準備期間であり
その人にとってその後二度と訪れることのない機会でもあるのです。
いろいろな年代の方に有効な機能矯正ですが
特に6歳からの成長をとらえながら治療していく
というのは最も効果が高くその後の安定性と
思春期以降に訪れる心身の健康な成長の重要な支えとなるのです。