6歳からの機能矯正

なぜ小児矯正は6歳から継続するとうまく行くのか?

早期抑制矯正について

矯正治療と言うと皆さん歯が生えそろってからやるもの
という印象をお持ちだと思います。
確かに歯列矯正は歯がすべて生えていなければてきません。

では歯がはえそろっていないうち不正咬合を予防するにはどうしら良いか?
そもそも歯がちゃんとした位置に生えてくれば良いわけです。
その為には?

つまりはそもそも歯が全部並ぶお膳立てをしてやればいいわけです。
たいていの場合歯がきちんと生えてこない原因は顎の大きさに対して歯が大きい
または、歯の大きさに対して顎が小さいというのが原因です
顎の大きさと歯との調和がとれるようにしてやればいい
ということになります。
どうするのでしょうか?

一時乳歯にフルブラケットを着ける
という治療が流行ったことがあります。
乳歯を通して顎の大きさを整えようということだったようです。
これはうまくいかないんだろうな、と思っていたところ
最近はこの話をほとんど聞かなくなりましたから
やはりうまくいかなかったのでしょう。
乳歯というのは永久歯にはない特徴があります。
それは根が溶けて生え変わるという特徴です。

乳歯の根は下から永久歯が上がってくると根を溶かす細胞が出現して溶けていく仕組みになっています。
この刺激は正しい永久歯の萌出だけでなく
何らかの刺激が根に入ったことによっても発生する場合があります。
この原理は遺伝子によって操作されているようで
永久歯が先手欠損でも乳歯の吸収脱落だけが起こる場合があります。
つまり永久歯による物理的刺激ではなく
そこにある遺伝子のよって活性されているらしいのです。

当然歯にブラケットを着けるなどの物理的刺激が
歯冠にかかることによっても活性されます。
従って乳歯にブラケットを着ければ顎のほうに力がかかる前に
乳歯の脱落が早く起こってしまうはずです。

これでは顎の形を整えることはできせん。
これを考案した先生も顎の形を整えることの重要性は分かっていたのだと思いますが
方法が違うと思うのです。

歯列不正が起こるときは歯が生えてくるときにすでにむちゃくちゃに生えて来ます
この時にきちんと歯が生えるようにしてあげれば後々の歯列矯正は少しの手間で行う事ができます。

顎の形を整えてきちんと歯が並ぶようにしてあげる。
この治療こそが機能矯正なのです。

成長期の子供は成長への刺激の感受性が高く成長不全があった場合
正しい方向に導くのは比較的容易です。

歯が生えてしまえばすでに成長は終わってしまっているわけですから歯を動かして並べることはできても成長不足を補う事は容易ではありません。
ですから歯列矯正では歯を抜いて歯を動かすスペースを作らなければならないのです。

子供のうちに不正咬合の可能性を見抜いて治療を行っていく治療を「早期予防抑制矯正」と呼びます。
私の機能矯正は本当は「早期予防抑制矯正」を得意としています。

不正咬合は何故おこるか?

不正咬合を防ぐためにはなぜ不正咬合が起こるか理解しなければなりません。
またそれにより不正咬合のわずかな予兆を見抜き親御さんへの適切な助言と治療方針を出せなければなりません。

以下は重症順に記載してありますので頻度がこの順で起こるわけではありません。

最も身近で頻発するものは
口呼吸です。

 

1)先天異常

機能矯正の歴史を紐解くと先天異常との取り組みにさかのぼります。

 

 

ピエール・ロバン症候群

下顎の小顎症を伴う事が知られている先天異常です。
鳥貌症ともいられあたかも下顎が無いような顔となります。
機能矯正の歴史はピエール・ロバン症候群の治療から始まった
ともいわれています。このとき治療用に開発された装置が改良され現在の機能矯正装置になりました。

第1、第2鰓弓症候群

 

顔面が左右非対称となる先天異常です小耳症を伴うなど主な治療は形成外科となり歯科はその後続発的な治療をすることになります。
私の師匠の岩附が治療経験を持っていますが形成外科での治療に続いて機能矯正治療を行い良好な結果を出しました。

 

以上不正咬合を伴う著名な先天異常をご紹介いたしましたが
どちらも非常に早期に化骨延長手術をしなければ治りません。
化骨延長とは、太い骨の真ん中を切断して
クランプをかけてその間を少しづつ開き
開いた隙間に骨ができるのを待ち、またそこを切断して伸ばすを繰り返し
目標の長さになるまで伸ばすという手術で
通常数か月
子供の顎の先天異常の場合数年かかる大変な手術です。
後天的に起こることはありませんので少なくとも普通に生まれた子供は心配する必要は
ありませんが骨格を治す機能矯正の原点となるもののためご紹介させていただきました。

 

不正咬合をある意味先天異常の一つと捉えるなら当然顎骨の成長力のある小児のうちに治療に着手する方がわざわざ成長力が無くなってしまうまで待つより治りがいいのは当然だろうと思います。

また近年歯の先天欠損がとても多くみられるようになりこの場合は早めに手を打たないといつまでたっても歯が萌出してくることはありません。
大きくなってしまうと顔面の変形などを併発してしまう事になります。

2)習癖

指しゃぶり

乳児の政祖先のための原始反射、哺乳反射

指しゃぶりはお母さんも気にされ早く治したいと思われる習癖の一つですが6歳になって永久歯が生え変わり始めるまでに解消すれば問題はありません。しかしながら私の症例で中学生くらいまで指しゃぶりを続けた方を見たことがありますが、この方は極端な上顎前突になり下顎の前歯は後方に倒れていると言う極めて難しい状態になっていました。

うつぶせ寝

うつぶせ寝を推奨する育児法があるようですが少なくとも健康な上顎の発育にはうつぶせ寝は勧められません。私が診た人で極端な上顎発育不全の方はみなうつぶせ寝だったからです。中にはうつぶせ寝の解消に強く抵抗されるお母さんもいましたが何とか説得して治療に成功しました。

3)遺伝

親御さんが不正咬合だとたいていお子さんも不正咬合になりそのタイプも似ています。
またご両親は歯並びがいいのに子供が不正咬合になったと言う場合何代か遡ると
そのような不正咬合の方がいたなどと言う事もあります。

4)呼吸

アデノイドの腫脹などがあり鼻呼吸ができず口呼吸になると歯並びは極端に悪くなります。歯は自ら咬みあう事によって位置を決めていくからです。咬みあっていないために歯がどこに行ったらいいかわからなくなくなってしまうのです。
最近アデノイド顔貌がイケメンになる、またはイケメンはアデノイド顔貌という話が広がっているみたいです。
これは調べてみて意外だったのですが皆さんはご存じでしたか?

確かに面長は最近の流行りなのかもしれません。

ジャニーズの二宮さんとかはアデノイド顔貌なんでしょうか?

 

が一つ条件があると思います。

面長で歯がきれいに並んでいるということです。

通常口呼吸の場合歯並びは悪くなります。

何故なら常に口が開いている状態になるためかみ合いがきちんと作られないのです。
そして常に口が開いているために上下に長い顔になります。
不思議なことにかみ合いがないと歯はきちんと並ばないことが多いのです。

アンガールズの田中さんもアデノイド顔貌ということのようです?

機能矯正治療に当たっては口呼吸の改善を図るよう常に気を配ってます。

5)原因が特定できないもの

大半の矯正の患者さんはここに分類されます。
不正咬合は様々なことで発生し病態も一様ではありません。また致命的なものではないので病因論的に予防するという研究がなされていません。
従って不正咬合に有効な予防は確立されていません。
原因云々いうよりとにかく早く治療に着手することがいちばん有効なのです。

不正咬合は様々な要因で発生しますがなってしまった以上治さなければ自然治癒はありません。
普通の親御さんは子供が不正咬合になることを望んではいないと思います。
(もっとも中には歯が一本生えてこないくらいなんでもないと言う方もいましたが)
小さなうちからしっかりと診断し各成長段階に適した治療を行う事によって
歯を抜くなどの無理な治療することなくきれいな歯並びを作ることができるのです。

症例

過蓋咬合を機能矯正で治した症例

7歳になるくらいの時に来院された患者さんです。
ここまでのディープバイトはさすがに病的と思われ治療に着手しました。
側貌をみるとかなりの下顎後退が認められます。

唯一救いだったのはこの子は上顎の発達があまり悪くなく
下顎の後退を治療すれば治ると思われました。
下顎は身長が伸びるとともに次第に大きくなっていきますから上顎の発育を取り戻すよりはやりやすいともいえます。

バイオネーター使用で治療

約5年間バイオネーターを使い続けることによって

以下のような治療結果を得ました。

しっかり下顎も発達し口唇の状態から鼻呼吸が確立していることが確認できます。

このお子さんはブラケットとワイヤーを使った後半治療を希望されませんでした。

中切歯に空隙があるのはそのためですが

本人もお母様も特に気にしておられませんでした。

またしっかり鼻呼吸が確立されたためか学力も向上し

中学受験でよい結果を納めることができました。

アデノイド顔貌を機能矯正~バイオプログレッシブで治した症例

典型的なアデノイド顔貌です。

当然歯並びは良くありません。

口呼吸で口唇の閉鎖力が弱かったため

前歯がきちんと萌出しませんでした。

治療後

バイオネーターからバイオプログレッシブの連続治療できれいに治りました。

お口もきちんと閉じて口呼吸は改善しています。

きれいなかみ合わせを作るとあとは自然な成長で

どんどんかみ合わせができていきます。

6歳から治療を始めることの意義

6歳から12歳の長期間機能矯正を続けるというのは
気の遠くなる時間のように感じるかもしれません。

6歳から12歳は成長の準備期間

しかしこの期間はその後の人生を健康に生きていくための
とても大事な準備期間であり
その人にとってその後二度と訪れることのない機会でもあるのです。

いろいろな年代の方に有効な機能矯正ですが
特に6歳からの成長をとらえながら治療していく
というのは最も効果が高くその後の安定性と
思春期以降に訪れる心身の健康な成長の重要な支えとなるのです。

非抜歯矯正(非抜歯拡大矯正)をするとどうなるか?

抜歯矯正と非抜歯矯正

矯正と言えば第一小臼歯を抜くもの、というのが通り相場ですが

小臼歯抜歯がうまく行かないと言う事は患者さんの間でも知れ渡り始めているようで

最近では非抜歯を売り物にしている矯正も増えてきました。

また矯正専門医でも趣旨を曲げ非抜歯を謳わないと食えないところもあるようで非抜歯矯正に手を付けているところもあるようです。

ところでなんで私が「非抜歯矯正」と他人事のように言うかというと私の「機能矯正」は抜歯矯正でも非抜歯矯正でもない第三の道だからです。

 

抜歯矯正で不具合が起こるわけ

さて以前の記事で抜歯矯正を日本人に適応するとどうなるかは詳細に述べました。

 

4番抜歯がすべて悪いわけではなくきちんとした検査に基づけば適応があり適応に基づけばうまく行くのです。なぜうまく行かないかについてはすでに述べていますがおさらいをすれば4番を抜いてうまく行くのは基底となる顎骨の成長が正常で歯の大きさだけが大きい場合です。ところが日本人の不正咬合はほとんどの場合顎骨の成長不全によって発生しているのです。

つまりただでさえ小さい顎骨をさらに小さくすれば歯は並んだとしても全体としてのバランスは崩れてしまいますしなにより最も大事な気道の位置的な確保をはじめとする呼吸機能の障害が発生します。

また高率に顎関節症も発症します。

いま呼吸機能と申しましたが

呼吸機能が正常に作用するにはまず舌の位置が正しくなければなりません。

舌の上には鼻の中の空洞、鼻腔がありの奥の上顎洞があります。

舌がきちんと顎の中に納まっていると言う事は鼻腔も上顎洞も正しい大きさを確保していると言う事になります。4を抜いて上顎を縮めてしまい舌が上顎に納まらなくなれば

この呼吸に関する器官の物理的大きさも小さくなり空気が通りにくくなります。

また舌が後方に押しやられるために閉口状態では気道がつぶれてしまい空気が通らないために口呼吸の傾向が強くなります。

舌が正しい位置に行き上顎がしっかりした大きさを確保し鼻腔や上顎洞も正しい大きさが確保できれば鼻からの空気の通りがよくなり、また舌がしっかり前方位を取れるため気道がしっかり広がり正しい鼻呼吸ができるようになります。

歯並びもこのように治せば後戻りも少なくなり多少乱れたとしてもれ気にならい程度となります。

機能の不全を残したままでワイヤーではを並べたとしても外せばあっというまに乱れてしまいます。当院ではアライナー矯正で抜歯矯正後の後戻りの治療をすることが多いですがたいていはミューチュアリープロテクテッドオクルージョンすなわち個々の歯が咬みあわせにより位置的に安定しあい保護しあうと言う関係は構築できず永続的なリテーナーの使用をお願いすることが多いです

非抜歯矯正とは

さてこのように4番抜歯は適応を誤ると重篤な副反応を引き起こすわけですが

非抜歯矯正と呼ばれている技法ではどうでしょうか。

非抜歯矯正で思い出すのは一昔前に一世を風靡したデーモンブラケットです。

基本的にデーモンはローフリクションと呼ばれる種類のブラケットで

デーモンブラケットに所定のワイヤーをセットすると歯列が拡大していくように設計されています。

またその前処置として第一大臼歯の遠心移動(後ろに送り込む事)を行います。

歯を並べるためのスペースを確保するために第一大臼歯を後ろに押し込むのです。

すると確かに4抜歯しなくても歯はきれいに並びます。

非抜歯矯正で不具合が起こるわけ

では何がだめなのか?

 

実はこの方法も上顎骨が充分に大きければ有効な方法です。

しかしながら一般的な日本人は(最近日本人と言うくくりがあいまいになっているのでこの言い方も適切とは言い切れませんが)上顎骨が小さいとお話ししました。

小さい上顎骨を抜歯で小さくすればおかしくなるというのは理解しやすいと思います。

小さい上顎骨の帳尻を合わせるために後ろ側にギュッと押し込めたとしたら?

上顎の後ろ側には神経や血管、それに呼吸に大切な気道が入っています。

前方にスペースが有り余っているならともかくそもそも小さな上顎に合わせて第一大臼歯を後ろに押し込むのだから重要器官の詰まっている後ろ側が大渋滞を起こして大変なことになってしまいます。

しかも4抜歯の場合に比べて不具合がわかりにくい。

偏頭痛がするとか、なんとなく体調が悪いとか、何故かわからないが表情が不自然とか。よくよく問診してみると非抜歯で矯正していたということがあります。

とてもよく起こるのは第二大臼歯の萌出不全です。

すべての歯がきちんと並ぶのが治療の一つのゴールなのですが

もともと小さすぎているところに第一大臼歯が押し込まれてくるのだから

第二大臼歯はたまったものではありません。

埋伏をしたり生える場所が無くて横向きになってしまったりします。

私が第一大臼歯の後方移動をしたケースでいちばん気になるのは

歯列が不自然に横に広くなりどうゆうわけだか

カッパのような顔になることです。

正しい診断こそすべて

この原稿を書いている時のことですが

タレントの堀ちえみさんの舌癌のニュースが伝えられました。

ほりさんは難治性の口内炎を訴え数か月におよびかかりつけ歯科医に通っていたそうですが難治性の口内炎はまず癌を疑うという診断の初歩を知らない歯科医のために治療好機を逸しステージ4、つまり末期がんと言われる段階まで進行してしまいました。

まだまだ治療の可能性は残されているとは言うものの

もっと早く専門医の診断と早期の治療ができていれば・・

と自分のテリトリーで起こったことに対してとても悔しく思います。

なにより堀さんの一日も早い回復を願ってやみません。

 

言いたいとは正しい診断ができなければ時に命にかかわる重大事となるということです。

 

また矯正治療のように長期間と多額の費用のかかる治療の場合

もし間違った結果を出してしまえば少なくとも治療にかかった時間を取り戻すことはできない、ということです。

4抜歯にせよ非抜歯矯正にせよ適応を見極められれば良い結果を出すことのできる治療法です。

しかしながら当院には矯正治療の不具合を訴えてお出でになる患者さんが後を絶ちません。

正解は診断の中にこそあり

まず治療法ありきではうまく行くか行かないかはギャンブルになるということです。

 

どうもおかしいとか納得が行かないと思われる方がいらっしゃいましたら早くお出で下さい。

ご相談お承りいたします。

痛みの少ない治療をするために

当院では治療に際して痛みが少ないようにいろいろ工夫をしています。

しかしながら虫歯がC3を超えると神経が炎症を起こして麻酔が効かなくなります。

また治療を先延ばしにして我慢し続けた歯は簡単に痛みが止まらなくなります。

これは炎症により局所のPHが酸性になり麻酔薬が中和されて効かなくなってしまうためです。

長期間慢性の感染が起きていると細菌の活性が強くなり抗菌剤の効きも悪くなります。

つまりは我慢して治療を先延ばしして悪化した歯は

どんなに努力しても痛みを出さずに治療することは困難です。この点はご了承ください。

つまり痛みの少ない治療にも限界があると言う事です。

最近よくおいでになるのは数年間放置して遂に痛みに我慢できなくなった歯の治療に

おいでになり痛みが止まったとたんに来られなくなると言う方です。

これでは歯はますます悪くなって次に治療しようと思ってもますます痛むことになります。

頑張って治療は最後までやり終わってください。

また歯を悪くしすぎないよう治療には早くお出でになってください。

セラミック矯正について

セラミック矯正という宣伝をしきりに流しているところがありますが

セラミック矯正とはすべての前歯を削ってしまい

セラミックの被せ物にしてしまうというものです

歯を削ると寿命は健康な歯に比べて10年以上

また神経を取ってしまうとさらに10年以上

歯の寿命が縮みます。

それでも構わないと言う方は自己責任ですが

気を付けていただきたいのは

この手のところは相談に行ったその場で

いきなり歯を削ると言うところがある

ということです。

話を聞いてもいいですが絶対にいきなり削られないようにしましょう。

一度削ってしまったら元に戻すことは不可能です。

また通常の機能矯正治療を行う事もできなくなります。

出っ歯の矯正治療(機能矯正)

不正咬合の分類

「歯並びが悪くて治療したい」と思われる咬みあわせの最右翼が所謂「出っ歯」ではないでしょうか。
今回はこの「出っ歯」に焦点を当てて機能矯正的な出っ歯のとらえ方とそれをどう治していくのか、というお話をしたいと思います。

「出っ歯」というのは不正咬合の分類でいうと「上顎前突」にくくられると思いますが、これにはいろいろな病態の物があります。
不正咬合にはこの反対の「受け口」所謂反対咬合も有名です。

意外なことに病態によっては初期の治療方法が、出っ歯も受け口も同じ手を取ることがあるのです。
なぜでしょうか?
それでは不正咬合の分類のお話からしていきましょう。

上顎前突

出っ歯はという状態は上の顎が下の顎に比べて大きいから起こるように思われがちです。
もちろんそのような場合もあります。
所見としては上の歯が唇から飛び出していていつも見えていたりします。

しかしながら同じ上顎前突でも上だけが異常に大きいという人はあまりいません。
お笑い芸人の明石家さんまさんはむしろ出っ歯を売り物にしています。
さんまさんの物まねをする人はまず着け出っ歯を入れますからね。
さんまさんは出っ歯でもあまり貧相感は無いように思います。

逆に箕輪はるかさんは出っ歯でなおかつ貧乏臭さを売り物にしていた時期があり、歯が出ていたことで打撲し前歯が死んでしまい黒変していたのを売り物にしていた時期すらありました。

一般的に出っ歯が嫌われるのはゲゲゲの鬼太郎のねずみ男のような面相になるときではないでしょうか。
それは貧相とにつながりなんとなく暗い表情になってしまいます。

ちなみにいうと私が機能矯正医としての第一歩を踏み出した症例は出っ歯の治療からでした。
この当時口腔内カメラを持っていなかったので模型の写真しかありませんが、まあ見事な出っ歯です。

下口唇の下に深い溝が見られることが口腔外所見の特長です。
ところでこの出っ歯、どのような要素の出っ歯なのでしょうか?

同じ出っ歯でもの生業によって治し方が違います。
この要素を分類したのがアメリカの日系人歯科医ヨシ・ジェファーソン先生です。

下顎前突

いわゆる受け口です。
受け口の場合はとても分かりやすいですから小中学生で受け口なら「治さないとだめだよね」という話になりやすいです。
しかも受け口は成長とともに促進されますから確かに早く着手したほうがいいです。
しかしながら受け口はやや面倒な側面を持っています。

今回は上顎前突が主役ですからこちらは触りだけ触れさせていただきますが、この受け口にも要素により3分類することができます。
また、これが厄介なのは12歳くらいで他の不正咬合の子がもうそろそろ終わり、という頃になって突如として下の顎が伸び始める場合があるのです。

初診時の問診でご家族とか親戚に極端な反対咬合の方はいないかをお聞きはしているのですが、お父さんもお母さんも正常でおじいさんや親類縁者にのような方がいなくても、お子さんだけに突然下顎過成長が来てしまうというケースも体験しています。
つまりは末端肥大症で背もドンドン高くなってしまいます。

これは下顎切除術でないと治せないのですが、このとき大事になるのは下顎を切除した時にきれいなかみ合わせになるように上顎の準備をしておくということです。
顎は切れば小さくなるけど背は引っ張っても伸びないので背が高くなったことをギフトと考えていただくのが一番だろうと思います。

どっちにしても、どうせ切るんだからほっておいてもいいかというとそうでもありません。
上顎の方をしっかり準備しないと手術の適応年齢に達しているのに着手できないという事態になります。
また当院の患者さんのお母様で受け口の手術をしたのですが、何故か矯正専門医が第一小臼歯を4本抜いてしまってその後反対咬合の後戻りや顎関節症などの副作用に悩まされ、当院で機能矯正装置を使って再治療したという方もいました。
どのような状態だったのかその時は知るすべはありませんでしたが、4抜歯はいらなかったのではないかと思われました。

下顎前突の要素によって治し方が変わってきます。
最初の方針が間違ってしまうとせっかく手術などの重い治療をしてもうまく治せくなりますから診断と見極めはとても大事です。

上下顎関係が正常な不正咬合

今回のメインテーマは上顎前突ですが比較上下額の関係は正常だか不正咬合という場合も述べておきましょう。
所謂乱食い状態の歯列です。
大学の時にこのような状態になるのは、顎の大きさに対して歯が大きすぎるためと習いました。
確かにそのような状態であれば歯を抜けば治るわけです。
しかしながらそのためには顎の大きさは正常であるのに、という前提条件が着くはずです。
では顎の正常な大きさとは何でしょうか?
それが計れなければ軽々に抜歯をしてしまうと歯は並んだが他がおかしくなった、という事になりかねないのです。

ビムラー分析は多数ある矯正の分析法の中でただひとつ、大きさ、を測る分析法です。
ですから、私の機能矯正は大きさに着目した矯正法と言えるのかもしれません。
ビムラー分析であっても当然抜くという処方が出る場合もあります。
ビムラー先生の治療でも4抜歯というのは存在しています。
それは上下顎の大きさは正常だが不正咬合が起きている場合。
この場合は間違いなく抜歯症例となるわけです。

ところが今まで20年近くビムラー分析をやり続けていて、日本人でこのような方にお会いしたことがないのです。
日本人は民族的に上顎骨の発育が悪くほとんどの人が上顎骨が小さいことが不正咬合の原因になっているため、抜歯と言う処方が出ないのです。
抜かない矯正を表看板にしていますが正確に「言うと抜く必要のない歯を抜かない矯正」と言えるのかもしれません。

ヨシ・ジェファーソンの分類

ヨシ先生は日系アメリカ人でサンフランシスコの開業医ですが、ビムラー先生の理論を実践で使いやすく分類したスケルタルダイアグラムを開発しました。
これは上下の顎骨の位置関係を垂直的な指標でとらえたもので、とくに機能矯正治療のときには大変役に立ちます。

実際のジェファーソンアナリシスはセファロレントゲン写真を製図版の上に乗せ、N-S平面、咬合平面、下顎骨の下縁平面を後方に延長し、交点の最大公約数を取ってポイントゼロとして、そこを中点としてN点から円弧を引いて上下額骨の位置関係を調べると言うものです。
これは結構作業量が膨大なため簡略化したものがスケルタルダイヤグラムです。
スケルタルダイアグラムを見る時、現在ではセファロレントゲン上の鼻骨の付け根の部分N点からフランクフルト平面に垂線を下して上顎骨の前縁A点が乗っている場合を正常とします。
また下顎もN点から降りた線に乗っている場合を正常とします。
この二つが乗っている場合をタイプⅠ(正常)として治療の一つの目標とします。

上顎前突3態

次に上顎前突の場合を考えてみます。
上下の位置関係が上顎が前に出ている場合をタイプⅡとしますが、N点から降ろした線よりA点が前に出ているものをタイプⅡA、乗っているが下顎B点が下がっているものをタイプⅡBとします。
さらにA点が前に出ていてB点が後ろに下がっているものをタイプⅡCとします。
この3態に分類することによってそれぞれ治療の方針が異なることになります。

タイプⅡAの場合は上顎を後方に抑えるのが方針となり、タイプⅡBの場合は下顎を前方誘導することが必要になります。
当然タイプⅡCでは両方を同時に行うと言うのが方針となります。

下顎前突3態

下顎前突の分類も同様です。
下顎前突をタイプⅢとしますが、上顎が下がっているものをタイプⅢA、下顎が出ているものをタイプⅢB、上顎が下がり下顎が出ているものをタイプⅢCとします。
当然それぞれに治し方は異なります。

上下のの位置関係は正常だが不正咬合

上下は正常だが両方出てしまっている場合もあります。
この場合をBP、両方下がっている場合をBRとします。
日本人はBRが多いように思われます。

上顎前突を治さないとどうなるか

上顎前突と言っても3態によって治し方は異なります。

タイプⅡA

このタイプは日本人にはほとんどいません。
完全に治すには外科手術が必要になると思われますが臨床経験がないので良くわかりません。

タイプⅡB

ピエールロバン症候群などがこのタイプに含まれます。
MASと呼ばれる装置はそもそもピエールロバンを治すために開発されたので、MASが良く効きます。バイオネーターⅡやビムラータイプA等です。
放置すると呼吸機能に障害がおこる他顎関節症などにかかりやすくまた奥歯が虫歯で無くなりやすくなります。

タイプⅡC

このタイプが日本人には一番多くなります。
MASを使ったのに治りが悪い上顎前突がこのタイプです。
MASを使う前に上顎に聞く装置を使う必要があります。
頬こけを起こすのがこのタイプです。

放置して場合はタイプⅡBに加えて頬こけやねずみ男顔貌などが治らないと言う事になります。
出っ歯なのに前に引っ張ると言うトリッキーな方法で治す必要があり、患者さんは驚かれるかもしれません。

症例

先ほどの模型の写真の患者さんですが、ビムラータイプAを半年ほど使用してここまでよくなりました。

お顔の状態はこのようになっています。

下口唇の下の溝が消えているのが観察されます。
この方は実はタイプⅡBでしたのでビムラータイプAで著効がありました。
さらにブラケットワイヤーを使って完治後の写真が下です。

初診時と比べると頬こけも改善していることが観察されると思います。
上顎前突は受け口と違い見落とされがちな不正咬合ですが、実は下顎が後退することで呼吸機能にかなり悪影響がでると言われており、治すことによってご覧のように改善して、患者さんの健康とQOLの改善に大きく寄与できるものと考えております。

矯正治療(歯科矯正)の料金について

自費治療と保険治療の費用の違い

良く聞く話ですが保険治療の料金に比べて自費になると急に高くなるといわれます。

まず基本的なおさらいをすると、保険治療というのは治療費の7割から9割を保険者といわれる組織が患者さんに代わって支払っています。
患者さんはそのために保険者に対して保険料を納めています。

保険治療について

通常保険というのは、納められた保険料より支払った保険金が少なくこの差が保険業者の収益になるわけです。
ところがほとんどの保険者は支払う保険金のほうが多く、どこの保険者もいつ破たんしても不思議ではない綱渡りの運営が続いているといわれています。
※ちなみに世界で健康保険があるのは日本だけで似た制度があるのはドイツだけです。

日本と海外の治療費比較

アメリカではオバマケアと言われる保険制度が作られましたが、これは民間保険会社と国家機関との融合で制度も利用法もとても煩雑といわれています。
その他各国の状況により社会福祉の一環として条件を満たした人に医療費の一部または全額が支払われるものや、まるっきり医療は自己負担という国まで様々です。

今では一部の国の人がわざわざ日本に一時滞在の資格を取得して、国民健康保険に加入して、ガン治療などの超高額医療を受けにくるなどの行為が横行しています。

このように保険治療は有意義なものの、保険者の財政状況(国家予算からの補てんを含む)がひっ迫しているため、特に歯科では充分な資金的な手当てができず、保険の無い諸外国に比べて同じ治療をした場合の医療費はものによっては10分の1という治療もあります

例えば根管治療(歯の根の治療)の場合、世界的には一根管50,000円~100,000円といわれていますが、日本では健康保険の保険料で一根管5,000円くらいで日本と海外では10~20倍の差があります。

コンポジットレジン充填(白い詰め物)が世界的には一歯20,000円くらいといわれていますが、日本では3,000円~5,000円、価格差4から7倍と実は桁違いに日本の歯科の医療費は安く抑えられています
しかも患者さん負担はその3割程度ですから安くて当然なのです。
価格が安い日本はとても良いことですが、患者さんにはできれば実態をご理解頂ければと思います。

日本の自費治療の費用設定

自費治療は基準が無くだいたいの相場はありますが各医院の裁量によって決められています。

松下幸之助が「値決めは命」と言ったといわれていますが、心血を注いだ商品でも誰も買ってくれなければ開発費も職員の手当も払えないわけで、利用者の方が「これなら買ってよいと思う価格」と提供する側が「採算がきちんと取れる価格」の整合を見つけて値決めをするという事が仕事を続けていくための生命線となります。

自費治療に関してもこれと同じことがいえ、努力して培った技術を「患者さんがこれなら受けたいと思う価格」と「材料費、人件費、光熱費、減価償却費を支払って医院が経営していける価格」というのを考えた末、治療費を決定しています。

保険治療は治療費が国により国民が利用しやすいよう一律で設定されている上、患者さんが支払われるのは0~3割ですから安いというのはある意味当然な話で、全額自己負担となる自費治療が高いと感じるのは当然ですが、実は「クリニックによる料金設定」が世界標準になります。

当歯科医院の自費治療費

当歯科院では矯正治療や審美歯科、インプラント治療などの自費診療の料金はすべて公開していますので、治療のご相談にお越しの際には料金表をご確認の上ご来院くださいませ。

時々いらっしゃるのですがご相談をお伺いして「ところでいくらですか」と聞かれ値段をいうと「え゛!!そんなに高いんですか?!」と言われる方がいらっしゃいます。
料金表をご確認の上お越しいただければ、このようなことを避けられ、無駄なお時間が削減できますのでご確認の上ご相談頂けますと幸いです。

矯正治療(自費治療)費用

矯正治療は伝統的に着手の時に治療費がかかり、その後調整毎に調整料がかかるという構成になっています。
何故か歴史的にどの矯正でもこの方法です。

逆に言うと他の料金体系の医院は生き残っていないと言う事かもしれません。
「値決めは命」ということかもしれません。
医院によって様々で最初に一括で料金を納めて、後は無料という歯科医院もあります。
※クリニック側からすると、一括支払いの場合は、日矯正の調整の患者さんだけ20人入っていたとするとその日は忙しかったのに売り上げは0と言う事になります。
正直この場合はクリニック経営は厳しくなります。

後述しますが当院では調整毎に調整料を頂いております

矯正治療機能矯正治療の費用

当院の機能矯正治療は料金体系がやや変わっています。
「機能矯正」と「バイオプログレッシブ」の2段階の治療を取っているため、それぞれの着手時に治療費を頂いております。

診断料:税別35.000円

機能矯正の生命線は診断にあります。
※主体はビムラー分析でこの分析にコンピューターを使うのですが、今のところアウトソースしています。

内容は
口腔内写真
模型の印象
パノラマレントゲン写真
ビムラー分析のためのセファロレントゲン写真
お顔の写真(正面、側面)
で、所用時間30分程度(、分析の結果が出るまで約一週間です。
料金の支払いは分析当日になります。

第一段階治療費:税別300.000円

診断が出てどのような道筋で治していくかが決まりましたら、治療プランに適応した機能矯正装置を製作します。
診断のご説明をさせていただき治療が確定しましたら、第一段階の料金(税別300.000円)をご精算いただいて装置をご準備します。
※当院の自費治療はご料金をご精算頂いてからの治療になります。
※機能矯正装置(機能矯正)での治療が中心となります。

第二段階治療費:税別300.000円

第一段階が進捗して骨格的な問題が解決してきたら歯を整える治療に進みます。
※機能矯正装置のみでも治療が完了する場合は第一段階だけでも問題ありません。

第二段階では方法は基本的にバイオプログレッシブをとりますが患者さんの状態で定型は無いともいえます。
※小児機能矯正では主に側方歯の交換が始まる次期成人機能矯正では、「これで歯を整えれば治癒に向かう」と確信が持てたときに第二段階へ進みます。

毎月の調整費:税別0円~5.000円

矯正治療は設定した方法で治療の進捗をみながら、概ね月に一回調整を入れていくことで治療を進めていきます。
機能矯正装置の調整やバイオプログレッシブのワイヤーの交換を行います。
※治療の内容に関わらず税別5.000円。
※治療の必要上、月にもう一度ご来院頂きたい場合がありますが、その場合は税別3.000円頂いております。
※3回目以降は頂きません。
※装置の使用に伴う、やむを得ない修理、使用法が間違ったための修理は都度見積もりでお支払い頂いております。

リテーナー費:最大税別10.000円程

治療が終了してきれいな歯並びとなった以降、その歯並びを維持し、さらに咬みあわせ等を安定させていくためにはリテーナーが必要になります。
※意外と皆さん見落とされていますが、この段階で歯が並んでしまったら後は何もしなくていいと思いがちです。

歯並びは日々変化しており、不正咬合があった人は治ったように、いえても元に戻ろうとする傾向が強くあります。
リテーナーは治療の結果を維持進展させるためにとても重要です。

アライナー矯正の費用

 

アライナー矯正は簡単な歯並びの修正には有効な治療法ですので、当院でも症例によってはアライナー矯正をお勧めする場合があります。

アライナー矯正は悪い歯並びの状態の模型を作り、模型を切り分けて正しい歯並びに近づけ、再組立てし、そこに熱可塑性のシートでアライナーを作り、口の中に入れてアライナーの弾性で歯を動かすのがアライナー矯正です。

アライナーの素材によりますが一度に動かせるのは0.2ミリ程度ですので、1ミリ歯を動かすのに5枚のアライナーが必要になります。

ここでアライナー矯正の実態と誤解されている方のためにご説明させていただきます。
時々いらっしゃるのですが、ワイヤーでは治せないがアライナーなら治せると思われている方がいます。
これは全く間違いで、ワイヤーで1か月で治るところアライナーは3か月かかるというくらいの見当で良いかと思います。

また、アライナー矯正は使ったアライナーの枚数で料金が変わりますので、あまり枚数がかさむと高額になってしまう点をご理解ください。

スマイルトゥルー矯正の特徴と費用:税別400.000円程(20枚)

スマイルトゥルーとはアメリカのDrスキップ・トゥルートが開発したアライナー矯正です。

「アライナー矯正の元祖インビザラインを改良した」といわれたもので、本来の特長は「症例を難易度によってレベル1~4に分類しアライナー矯正に可撤式の矯正装置を併用して治す」というものですが、日本ではアライナーのみの部分レベル1と2のみが供給されています。

インビザラインと同じく初診1回の型取りで治癒までのアライナーを制作してしまうものですが、1段階ごとに3Dプリンターで制作した模型ごと納品されてきます。

1枚のアライナーで動かせる距離は0.2mmで変わりません。

初診の診断はアメリカの分析センターで行われ(税別20.000円)、結果はコンピューター上で提示できます。
料金はアライナー1枚当たり税別約15.000円ですが、一括納品のため診断に基づき見積もりを提示し良ければ制作着手となります。

アソアライナー矯正の特徴と費用:[1パターン上か下片方]税別20,000円 [上下同時]税別38,000円

アソアライナーはインビザラインなどの一括制作のアライナー矯正が枚数が多くなると、どうしても誤差が生じ後半で合わなくなってくるという欠点があるのを改善した治療法で、1枚アライナーを使う毎に型取りをして都度設計をしていくというものです。
※初診段階での診断料はかかりません。

都度のアライナー印象時に料金をお支払いいただくことになり、治るまでまたは御納得いただけるまで治療を行います。
最終的な治療費が終わるまで分からないので確実に数枚で終わると言う症例ではほかの矯正よりお安くなります。

まとめ

自費治療の料金は医院の裁量で決めており各医院によって同じ治療でも料金も体系も異なります。
それだけ自由度が大きく良いものにであれば保険治療では得られない結果と魔族度がえられます。
もちろん逆もまた真です。

自信がある医院では高めの設定となり無い医院では安い設定となる傾向があります。
「安い」といって飛びつかず、「高いけどただのボッタクリ」というクリニックがあるのも事実のため、たいへんだと思いますがいろいろご検討の上主治医院をお決めください。

当院の機能矯正治療(矯正歯科)の詳細はコチラ

機能矯正(矯正歯科)と咬合(かみ合わせ)理論:機能矯正治療のゴール

機能矯正治療のゴールとは

機能矯正(矯正歯科)は歯並びというよりかみ合わせ(咬合)の完成をゴールと見据えています。
歯列矯正では咬みあわせより歯並びを重視する傾向がありますから、このあたりが機能矯正と歯列矯正の違いといえるかもしれません。
では、かみ合わせのゴールとはなんでしょうか?

咬合理論とは

咬合を考えるとき顎が静止している場合の咬合と顎運動がおこり下顎が様々な運動している場合を考える必要があります。

:顎の静止状態(セントリックリレーション、ロングセントリック等)

静止状態の咬みあわせは咬合運動の起発点となり終着点となるので非常に重要です。

ここが安定していないと顎は全く落ち着くことができないために、常時不定運動を続けることになり歯ぎしりの原因となります。
これをセントリックリレーションと言います。

セントリックリレーションが完全に失われるとかみ合わせは崩壊します
安定させるためには歯が尖がった部分と溝の部分で咬みあっている必要があります。
またこのような咬合関係を完成させることが、機能矯正治療のゴールと当院では考えています

:下顎が運動することによる歯の滑走

動的な場合はどうでしょうか。

顎運動は上顎は動きませんが動くのが下顎なので下顎運動として分析研究されてきました。
いろいろな計測器具を駆使して下顎運動を描記し、パターン化して普遍的に再現しようという試みが盛んに行われています。

1962年、スェーデンのPosseltによって紹介された運動範囲菱形柱があります。
これは下顎の切歯点の運動経路を3次元的に描記したもので、今でも顎運動の考え方の基本となっているものです。

このうち矯正で重要なのは、切歯が咬合の接触状態で前方および側方に運動した場合のカラスの足跡みたいになる図形、いわゆるゴシックアーチといわれるもので、
矢状切歯路角(真横から見たときに下顎が前方にずれていくときの角度)
側方切歯路角(真上から見たときに横に滑走させたときに出る角度のこと)
は咬合回復の目安となり、顎関節症の診断をするときにとても重要になります。
ゴシックアーチを離れ歯が滑走ではなく開口運動を始めると
運動の主体は顎関節となります。
顎関節が健康であれば運動は二つの弧を描くこととなります。
矯正治療にとって重要なのは
最初の弧、ターミナルヒンジアキシスから閉口に至る過程が干渉なくスムーズにいくことです。
ここに干渉が生じれば顎関節が障害され2番目の開口運動も障害されることになります。

ギシェーによるとゴシックアーチは前歯から側方歯でも描記され、最終的には顎関節も描記しているとしています。
顎関節は咬合的には第四の大臼歯であると考えると、歯の運動と顎関節の運動は調和がとれている必要があるということになります。

もう一つ重要なのは運動菱形柱は3次元的な解析で、側方から見た場合の下顎の前下方への運動描記されています。
この運動路は前方はもちろん切歯によって誘導されているのですが後方は顎関節によって支えられています。

下顎が前下方に運動すれば当然顎関節も前下方に運動することとなり、この時両者は調和がとれていることが必要になってきます。
つまり下顎運動はすべて切歯の誘導と顎関節両者の調和のとれた誘導が必要になるわけであってこれは成長の過程で成長とともに獲得されてきます。

機能矯正の基礎「ナソロジー」について

当院の咬合理論はナソロジーに基礎をおいています。

ナソロジーとは1920年代に、アメリカのMcCollumとStallardによって創設され、健康な歯を持つ高齢者の口腔内を観察することにより、偏心運動中に前歯にガイドされて臼歯部歯列が上下方向に離開し、また咬頭嵌合位では前歯は約25μ程度の間隙をもち、臼歯部歯列だけで垂直方向への荷重を負担していることを明らかにしました。
そして、理想的な咬合は、前歯が臼歯を保護し、臼歯が前歯を保護する作用を観察し、この咬合様式をミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンと名付けたのです。

このミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンこそ機能矯正がゴールと目指すかみ合わせなのです。

ナソロジー本体のテクニック的なところ(ワクシングコーンテクニックなど)はあまりの煩雑さで現在行っている人はほとんどいなくなってしまっていますが、だいたい今行われている手法はナソロジーを簡略化して実践されています。
「歯を削らず補綴」ではなく「矯正治療的」に実現しようとしているのが当院の機能矯正です。

歯科矯正治療と顎関節症

小児歯科矯正を行っていると成長とともにかみ合わせを正常に育てていくことになりますから、当然顎関節も正常に成長していき最終的には調和がとれて完成します
補綴をせずともナソロジー的な咬合が自然と獲得されてくるわけです。
それが顎関節とともに育つため当然に調和がとれているわけです。

成人(大人)歯科矯正ではすべて完成したところから再構成する治療になりますので、歯列は変化させられますが顎関節はすでに完成してしまっているので形態的に再生することはできません。

今ある形で関節の運動に無理がかからないように治療しなければならないのですが、失敗すると顎関節症を発症してしまいます。

成人機能矯正の第一段階はまずこの顎関節の動きを正常化します。
顎関節に一番負担がかかるのは切歯路と関節の運動路が不調和の場合です。

機能矯正ではまず自然獲得した関節の誘導路を取り戻すように、不正なかみ合わせ力の治療が第一段階に含まれていますから、歯列が整った時は関節と切歯の誘導路は調和がとれていることになりますので治った後で顎関節症にはなりません。

抜歯と顎関節症について

4抜歯矯正がしばしば重篤な顎関節症を引き起こすのは4抜歯のあと前歯部分を後方に牽引してしまい、切歯点を後方に移動させてしまう事により切歯路の角度が関節の運動角に対して急斜角化するためではないかと考えられます。

切歯点だけ後方に移動してしまえば、顎関節との物理的な不調和が生じ運動路が変化してしまった顎関節が障害を受けます。

逆に言えば切歯点の位置が変わらないのなら、4抜歯矯正をしても問題ないのであって極稀に抜歯矯正できれいさっぱり治ってその後何も問題のない人がいるのはこのためです。

つまり
「4を抜いたら3が4の位置に入り込んであとは何もせずに治ってしまった」
というような方は4抜歯が適応だったという事です。

4抜歯がすべて悪いわけではありません。
しかしそれを金科玉条にしてすべて強引に適用すれば副反応が起こる方が出ます。

当院での機能矯正治療のゴール

機能的に考えるなら歯列がきれいに並んでいるのみならず咬合機能が回復していなければなりません。
咬合論的に考察すれば歯科矯正治療も顎関節を考慮しさらにミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンを目指すことが必須になると考えます。

この観点に立つならどの歯を抜くか抜かないかということも自ずと明らかになるはずであって抜歯をすることが何故か既得権を得るようになってしまって、抜歯ありきという治療になってしまっては本末転倒ではないかと思っています。

矯正治療が終わって
・治療して本当に良かった。
・機能矯正治療をやって幸せになった。
・苦しみから解放されて毎日とても楽に暮らせるようになった。
と患者さんに思って頂き、患者さんの生活の質を向上させることこそ、当院では機能矯正治療で本当に目指すものと考えています。

当院の機能矯正治療(矯正歯科)の詳細はコチラ

「保存修復」が基本だからできる当院独自の歯科矯正:院長の学生時代

今日は私が歯科医になったころの話をしたいと思います。
私は機能矯正を長年やっていますが矯正専門医ではありません。
ですが自分でいうのもなんですが矯正歯科は得意としています。

私は矯正治療の臨床を始める前に歯医者の基本ともいえる虫歯をしっかり直し、ブリッジをしっかり入れて良く咬める入れ歯をたくさん作り、歯医者の地力を鍛え、経験を踏まえた上で歯科治療の一環として矯正治療の技術を習得しました。

そこで今回は私の「「保存修復」が基本だからできる当院独自の歯科矯正:院長の学生時代より」についてお話させていただければと思います。

院長の大学時代の研究・研修

私は卒業してすぐ大学では「保存修復科」と言うところに在籍していました。
保存修復と言うのは虫歯の治療を専門に研究する科です。

虫歯の治療と言うと歯医者なら当たり前の技術と思われるかと思いますが、まず当たり前のことがしっかりできることがいい歯科医への第一歩だろうと考えこの科に入局しました。

歯の削り方の習得

「歯医者は歯を削るところ」というイメージをもっている方は多いと思いますが、ただやみくもに削っているわけではありません。

まず虫歯でだめになってしまった歯をきれいにし、下地を整えてから歯をきちんと修復できるように形を整えます。

初段階では基本形態があり、アンダーカットなく外開きにすること、幅は歯の幅の1/3以下にすること、窩洞(削った穴)全体の形を鳩尾形に(なだらかな曲線の連続)することなどを意識した上で様々な原則に従って歯を彫刻のように形成していきます。

石膏模型での技術取得と実践

研修では最初からなかなかできるものではありませんので、最初は4倍の大きさの石膏模型で練習をします。
石膏模型も石膏の塊を作って自分で彫刻して作りました。

研修を元にイメージを完全に頭に入れてから実際に患者さんの口の中で実践を行います。
頭でわかっていても実際口の中で削ろうとすると、見える角度が限られ多くの死角があり、何より口の中は狭く入口が一か所で、患者さんによって口の開け方もまちまちですから簡単にできるものではありません。

皆さんの嫌いな切削器具ですが、口の中に真っ直ぐ入れるというのは至難の業なんですね。

「どうしても斜めに傾いてしまう。」
「真っ直ぐ削ったつもりの歯が印象(型)を取って石膏を流して模型にしてみるとゆがんでいる。」
「ゆがんでいるときちんと詰められない。」

いろいろな問題を経験した上で徐々に補正を入れて器具を入れる角度を研究していきました。

器具を入れる角度の研究

上の歯とか奥歯の向こう側は見えないから鏡を使って見る。
ところが鏡を使うと反対に映りますから手も逆に動かさないといけない。
これがまたまた難しい。

最初のうちは何が何だかわからず時間が過ぎていくような毎日だった気がします。
頑張れば慣れるもので1、2年すると何ともなくなってきます。
今では「ほとんど何も考えなくてできる」ようになっています。
「いつまでたってもできない」といわれる技術でもあります。

接着技術

さてこの当時もっとも重要な保存修復の研究課題が「接着」でした。

今でこそ歯科治療は接着なしには語れないほどポピュラーな技術になっていますが、私が歯科医師免許を取ったころは「歯に物は接着できない」と公然と大学の授業で語られるほど口の中で接着操作をすると言うのは困難な技術でした。

まず口の中は常時湿っています。
当然歯の表面も湿っています。

歯はエナメル質と象牙質という特性の異なった二つの成分から構成されています。
エナメル質は歯の表面を作っている成分で人間の体の中で最も硬い成分です。
96%は無機質で残りが水と有機質です。

モース硬度と呼ばれる硬さの指標が7と言われ硬さだけでは水晶並みです。
ダイヤモンドのモース硬度が10ですからその方さが分かると思います。

象牙質はエナメル質と全く特性が異なります。
モース硬度は5~6でやや柔らかく70%が無機質[ヒドロキシアパタイト)、20%が有機物(膠原繊維(コラーゲン繊維)と非膠原性タンパク質)、10%が水分です。

長い間歯を接着から遠避していたのはこの象牙質に含まれる水分とコラーゲンでした。
またコラーゲンは歯髄と交通しており、強引にコラーゲンに接着しようとすると歯髄が死んでしまい医原性のトラブルを引き起こすことでも知られていました。

クラレクリアフィルについて

この歯への接着と言う難関を最初に実用的に突破したのは日本のクラレクリアフィルという製品です。
ちょうど私が大学を卒業したころに発売されたクリアフィルは、その当時の保存修復には欠かせない画期的な充填剤として広く使われていました。

クリアフィルの接着様式は初期の製品ではエナメル質だけに接着するものでした。
エナメル質と言うのは均一に表面から垂直方向に構造線が入っており、この構造線をリン酸で溶かしできた細かい線(エナメルタグ)の間にBisGMAというサラサラのレジンを流し込みその上に本体のレジンをとめます。

このリン酸ではの表面を溶かす技術をエッチングといい、時間の管理がとても難しく短すぎると効かないが長すぎるとエナメル質が全部溶けてしまうという厄介な物です。

また象牙質はエッチング剤を長く作用させると無機成分がすべて溶けてしまい柔らかい有機成分だけが残る形となり修復操作を失敗させる原因となったりしました。

ですから初期型のクリアフィルはテクニックエラーに敏感でうまく行ったものはいつまでもきれいだけどちょっと何かがうまくなかったものはすぐに変色したり取れてしまったりするという代物でした。

今は改良が重ねられ、エナメル質にしか接着しなかったものがむしろ象牙質に強く接着するようになり、格段に耐久性も審美性も向上しています。

当時は現場と研究者が必死に開発したものが今臨床現場で活躍していると思うと少しうれしかったりします。
その創世記に臨床に入れたという事を自分的には誇りに思っています。

今までの経験をいかした歯科矯正

接着と言うと今の矯正治療には接着は欠かせない技術です。
今の矯正治療は接着なくしては成り立ちません。

マルチブラケットしかり、舌側矯正しかり、保存を歯科医人生のとっつきに選んだのは大正解だったと日々臨床を重ねながら思う事久しいです。

矯正治療も同じだと思いますが、まずしっかり正しい方向を見据えて、一歩一歩進んでいくことがうまく行くコツなんじゃないかと思っています。

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