矯正科を受診して言われること
昔大学で矯正の講義を受けたとき
「不正咬合の予測はできないので糸切り歯が生えて確かに不正咬合だと分かるまでは治療できません。」と教授が言っていました。
その後機能矯正を手掛けてご相談にお見えになった患者さんの親御さんから
「糸切り歯が出るまで治療はできないと言われました。」とひどい狭窄歯列のお子さんをお連れになって言われることが良くあります。
この先生はきっととてもまじめで大学で習ったことが真実だと信じておられるのでしょう。
糸切り歯が出る前の状態は?
相談に来られたお子さんは糸切り歯はまだ出ていないのですが
2番のとなりに隙間なくぴったり4番が生えており
このまま放置しておけば側切歯の前に糸切り歯が生えてきてひどい八重歯になるのは見え見えでした。
一刻もはやく治療を開始したほうがいいですよ、とお勧めしたところ
治療をお任せいただいて間一髪八重歯になるのは回避できました。
実は八重歯は生えた後より生える前の方が圧倒的に治しやすいのです。
日本人は八重歯好き
もっとも日本の文化では八重歯を「かわいい」として喜ぶ風潮もあります。
たしかに日本人の丸っこい顔にちょいっと生えている八重歯は愛らしいと言えば愛らしいですね。猫がかわいいのはニャンと言った時に犬歯が一瞬八重歯で見えるのも一因かと思います。
また大食いクイーンの萌えアズさんは健康な歯並びなのにわざわざ付け八重歯を付けていることで有名です。
がテレビを見た感じでは正直あまり可愛い八重歯になっていませんね(苦笑)
治療は糸切り歯が出てからという矯正医の話に
あまり違和感を持たない人が多いのは、八重歯になったらなったでいい、と思っている人が結構いらっしゃるからかもしれませんね。
可愛い八重歯も歳しだい
しかしながら若いころは可愛い八重歯も加齢を重ねると歳不相応になってきます。
だいたい男性ではちょっと不審な感じになってしまうので八重歯は避けたいところです。
なにより清掃性が圧倒的に悪くて虫歯になりやすいと言う欠点を持っています。
やはり歯はちゃんと並んでいるに越したことはないと思います。
私の機能矯正で八重歯を治すと
もう一つ余談ですが
私の機能矯正で八重歯を治すと
なぜか八重歯のかわいらしさが残ったうえで歯並びが良くなるという効果が出ます。
これに関してはなんでそうなるのか、はっきりご説明はできないのですが
八重歯が可愛い人は糸切り歯の位置がそもそも可愛いところに生えているので
歯が並んでもその可愛さは変わらないと言う事なのでは、と思っています。
このような人に抜歯矯正をして糸切り歯を後ろに引っ張ると変な顔になるようです。
犬歯はいつ生えてくるの?
ところで犬歯はいつ生えてくるのでしょう?
年齢でいえばだいたい8歳くらいですが個人差はかなりあります。
また上下の生え方には特徴的な差があって
下の犬歯は乳臼歯の交換に先立って生えてきます。
上の犬歯は小臼歯の萌出が終わったのちに最後に歯列に入ってきます。
この時萌出スペースが足りなければ外に振り出されて八重歯になります。
つまり犬歯が出るまで待て
は防げば防げる八重歯をみすみす生えさせてしまうまで何もするな
と言っているともいえるわけです。
経験を積めば乳歯列から不正咬合を予見できる
さいきん自分はたくさんの患者さんを治してきたおかげと言いますか経験と言いますかで
乳歯列の状態を見たらだいたいどんな永久歯列になるか予測できます。
それと分析の数値を突き合せればどのようにしていったらどうなるか
つまりどう育てれば良くなるのかをみきわめ
不正咬合を防ぎながら健康な歯列に育てることができます。
ただしそれは機能矯正で成長を促しながら治療をしているからできるのであって
歯を並べることだけを考えているなら
そもそも並べる歯が無かったら並べることができないわけです。
糸切り歯が出るまで待てとはどうゆうことか?
さっき上の糸切り歯は最後に歯列に入ってくる
と述べましたが
要するに上の糸切り歯は永久歯で最後に生えてくる歯なのです。
つまり
「糸切り歯が出るまで待て」
と言う事は
「不正咬合を完成させてください」
と言っているのと同じことにもなるのです。
糸切り歯が生えて立派な不正咬合になったら4番抜歯をして歯を並べてあげましょう
というのが「糸切り歯が出るまで待つ」ということです。
ま、これはこれで一つの方法論ではありますよね。
糸切り歯が出るまで待つと治療はやりにくくなる
さてでは糸切り歯が出るまで待っているとどんな不都合があるのでしょうか?
まずは私が診ている限り
最も多い不正咬合の原因は上顎の発育不全です。
上顎骨は4歳で70%の成長が終了していると言われていますから
6歳で上顎発育不全が見られたら一刻も早く上顎に刺激を与えて成長を
促進しなければなりません。
8歳まで待っていればそれだけロスタイムになってしまいます。
それに不正咬合が重症である場合
永久歯の萌出は遅れる傾向にあります。
待っても待っても糸切り歯は生えて来ず
遂に埋伏してしまったと言う事例もあります。
機能矯正治療の本来の妙味を発するには
6歳から治療を開始するのが最も適しています。
機能矯正はドイツから始まった
伝聞ですがドイツの歯科大学の矯正科に行くと
小さな機能矯正装置がたくさん並んでいるのだそうです。
ブラケットは大きなマーケットである
歯が無ければブラケットは使えない
ブラケットで歯を動かして真っ直ぐにしようと思ったら
歯が無ければどうにもなりません。
じつは歯科業界での力関係はその分野がいくら儲けているかによって決まります。
矯正材料のメーカーは高価なブラケットを販売することによって多くの利益を上げており
それだけ歯科業界への発言力は高いと言われています。
矯正歯科の著名どころはみな有力歯科材料メーカーのスポンサーを受けており
その利益に反する発言はしにくいようです。
だから
とは考えたくないのですが
もしブラケットを使わずに歯が治ってしまったらメーカーは大打撃をうけるので
もしかすると発言に対して圧力をかけていると言う事も考えられなくもないと思います。
結局治療は小さいうちから始めるに限る
結論を言うと
適切な診断と両方を用いる限り
治療は小さいうちから行うのに越したことはなく
糸切り歯が出なくては治療ができない
というのは
「そのような治療法を取るならば」
と言う事だと考えるのが適切だと思います。
また機能矯正を適切に施術していくと
身体機能や知的な機能に好影響があることが多く観察されていますが
治療開始年齢が上がるにしたがってこの影響は薄れていくことも観察されています。
子供さんの歯をきちんと成長させたいと思われるなら
早めにお出でになることを強くお勧めいたします。