抜かないと出っ歯になるはお決まりの脅し文句
2022.07.16加筆
抜かないと出っ歯になる
抜かないとゴリラ顔になる
抜歯矯正を受けたまたは相談に行った方は一度はこの決まり文句を聞かれたことがあるのではないでしょうか?
ゴリラとはつまり
歯が前に出すぎてしまい上の歯も下の歯も出てしまう
口がゴボるということです。
歯並びが悪い場合歯が基底となる顎骨より歯がはみ出しているから並ばない
というのはほぼどの方でも間違いありません。
歯並びを治すためには歯が並ぶ基底と歯の大きさを合わせなければ並ばない
それは物理的に明らかです。
問題はその物理的スペースをどのように確保するかということなのです。
歯並びを治すのかかみ合わせを治すのか
そこでどうやってスペースを空けるか
一つは歯を抜いてスペースを空ける
いわゆる抜歯矯正となります。
抜歯矯正の場合
当然歯を抜けばスペースはできます。
抜歯矯正も終了直後はとてもきれいに歯が並んでいます。
歯を抜いてスペースを確保した後はいかにその位置に歯を移動させるか
歯は倒す、起こすと言った傾斜移動は簡単にできるのですが
歯を水平に動かす水平移動はなかなか難しい。
その為矯正専門医はこの水平移動のテクニックを磨きます。
そしてすべての歯をまっすぐにして水平移動をして模型のように
きれいに並べるわけです。
歯をまっすぐにするのが抜歯矯正の主な目的です。
確かにゴリラにはならないんですけどね。
非抜歯矯正の場合
では抜かない矯正はどうなのでしょう
抜かないで歯が並ぶスペースを空けるには
どうにかして場所を確保しなければなりません。
一番一般的には
6番をつまり第一大臼歯を後ろに送り込むことによって
前側のスペースを作るのです。
デイスタライズというテクニックで
デイスタライザーとかペンデュラムとかという装置が良く使われています。
これをしないで
は曲がっている歯に強引にブラケットを接着してまっすぐにしようと思えばできます。
ところがそもそも場所が足りないのですから
歯は場所を求めてずれます。
歯が動くときは歯根の表面積が少ない歯が動くので当然前歯が動きます。
するとよく聞くゴリラ顔になるというわけです。
もちろんこのことはよく理解されているわけですから
初期の非抜歯矯正ではともかく
すぐに6番の後方移動というテクニックが応用され
この場合も後述のような問題が起こるのですが
とりあえずゴリラになることはありません。違うことがおこります。
何故でしょうか?
当院の患者さんは一人も出っ歯になっていない
当院で矯正治療をされている患者さんの一割程度は抜歯矯正の不調を訴えた方の再治療です。
皆さん言われるのは説明を受けた際に「抜かないと出っ歯になってゴリラのような顔になる」と脅されたそうです。
ところで当院の治療例の方はほぼ全員抜いていないのですが出っ歯になっているでしょうか?
うまく行った人だけを出している?
疑問に思うなら残りすべての症例をお見せしますからどうぞおいでになってください。
当院の症例で抜かずに出っ歯になった人は一人もいません。
初診時は口唇が閉じても前歯が飛び出していました。
治療完了後、口唇はきちんと閉鎖して全体にいい感じになっています。
機能矯正を手がける前は
機能矯正を手掛ける前は
矯正した人は歯が悪いなーっというのが臨床をしていての実感でした。
私はもともと矯正と言う治療に懐疑的でした。
というのも歯科医になってから矯正治療後の患者さんを何人も診たのですが
みなさん何かしら矯正をしたと言う事による不具合を抱えておりました。
これならもともとの歯並びの方が良かったんじゃないか?
いつしかそう思うようになりました。
矯正しないと歯が無くなっていく
しかし臨床を重ねているうちに
歯並びの悪い人は中年期以降どんどん歯が無くなっていく、と言う事に気が着きます。
補綴をやってみると分かるのですが歯ならびの悪い人の前歯に前装冠をいれると咬みあわせの調整にものすごく時間がかかります。
模型上でどんなに良く調整しても口の中に入れるとなぜだかわからないけど高くて咬めないのです。
つまり歯並びの悪い人では咬みあわせ軸が多方向に発生し制御不能な不正な力が
歯に入り続けてしまうのだろうということが推測されました。
つまり機能がおかしいののです。
歯並びが悪いのも個性のうち
なんて考えていたのですが経験を積むとやはり歯は補綴学的に正しい位置にあるべきだ
歯がまっすぐに並び
上の歯は下の歯をカバーして
歯の頭と溝がかみ合っている。
これが正しい安静位置でのかみ合わせです。
機能を治して少しでも長い間自分の歯で噛めるお口を実現しよう
と考えが変わってきました。