2019-11-23
歯科医師の本音子供の成長に悪影響があり意外に見落とす出っ歯
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意外と気にならない子供の出っ歯
お子さんの矯正相談で一番典型的なのは反対咬合です。
これは不正が分かりやすくお子さんが反対咬合の場合親御さんはあわててご来院になります。
しかし過蓋咬合つまり上の前歯が下の前歯をしっかり覆ってしまっている場合はどうでしょう?
上の前歯がしっかり見えていると反対咬合のように極端な違和感がないため
それが異常だということになかなか気が着きません。
それでは健康面への影響はどうでしょうか?
咬みあわせが健康に及ぼすもっとも大きな影響は呼吸です。
反対咬合の場合見た目は悪いですが実は下顎が前進していることによって
気道が開いている場合が多く呼吸にはあまり影響がない場合が多いのです。
ただし極端な上顎発育不全に伴う反対咬合では
やはり呼吸に問題が起こりますが。
極端な下顎後退です。下の前歯はほとんど見ることができません。このようなお子さんは早めの来院をお勧めします。
下顎後退(出っ歯)は呼吸に悪影響がある
下の前歯が見えないほどの過蓋咬合では下顎が後ろに押しやられていることが多く
下顎が後ろに追いやられると気道がつぶれてしまって呼吸がしにくくなってしまうのです。呼吸が苦しい子の呼吸の様式には一つの特長があります。救急蘇生のABCと言うのがありますが一番に来るAとはエアウェイ気道の確保、になります。
具体的にどうするかと言うと下顎を前方に引っ張り出すのです。
意識が落ちると筋肉が弛緩して下顎が落ちてしまいます。
この時舌も落ちる可能性があるわけですが、まず口の中を調べて遺物の除去舌根沈下があれば引っ張り出してさらに下顎も前に引っ張り出して空気の通り道を確保する。
その後B、ブリージング人工呼吸へと進むわけです。(ちなみにCは心臓マッサージ)
ですから下顎が後退していると言う事は空気の通りが悪いというのは
人間の解剖学的な特徴なのです。
下顎後退は口呼吸になりやすい
下顎後退している人が口を閉じていると気道がつぶれてしまって苦しいので口をあいて口で呼吸することになります。いわゆる口呼吸です。
呼吸の正解は鼻呼吸で
鼻と言うのは呼吸するための器官ですから呼吸に必要な機能が備わっています。
鼻から入った空気は鼻の入口でごみやほこりを取られます。鼻の入口は
エアフィルターの役割をしています。
その後鼻腔に送り込まれた空気は鼻腔内の繊毛でさらに細かい細菌などを除去され
さらに体温によって温度調整をされ加湿されてちょうど良い具合になって
気管に入ります。また鼻腔は適度な広さを持った空洞でここが呼吸チャンバーの役割をはたして空気の取り込みの効率が良くなるようになっています。
口にはこのような機能はありませんから
空気はストレートに口腔内を通過し口腔乾燥を引き起こしながら
乾いたまま気管、気管支を直撃します。
口腔乾燥を引き起こし入った細菌は繊毛によって体外に排出されることなく体内に取り込まれてしまいます。
ですから口呼吸の子は風邪をひきやすいのです。
口呼吸の子供は落ち着きがなくなる
このように口呼吸の弊害は広く知られているところですが
さらに重要なことに口には鼻腔と言う呼吸チャンバーは存在しないため
空気の取り入れ効率が悪く呼吸数が増加します。
呼吸数が増加すると心臓に負担をかけると同時に
その人の性格も変えてしまいます。
すなわちいつではハァハァと細かい呼吸を繰り返しているために
落ち着きのない人になりがちです。
子供の患者さんを診ていて思うのは
過蓋咬合のこどもは多動が多いということです。
しっかりした統計データーではないため確定的に言う事は出来ないのですが
矯正装置の調整に多動の子供だとそうではない子供に比べて
倍時間がかかるので体験的に過蓋咬合の子は多動が多いなと感じます。
当然多動で集中力がなければ学力に差が出るのは明白だと思います。
それに加えて口呼吸だと体に取り込める酸素量が違ってきますから
脳や身体の発育にいい影響があるはずはありません。
子供の機能矯正で成績が上がっているかもしれない
これも体験的なものなのであまりそうだとは公言できないのですが
機能矯正治療がしっかり終わった子は良いところに進学している
と思うわけです。
はじめたころは多動でどうにもならなかった子が
機能矯正を終わりバイオプログレッシブに入るころには
すっかり落ち着いてブラケットを着けさせてくれるというのはいつも体験しています。
そうなればしっかり落ち着いて勉強にも取り組めるのではないでしょうか?
この患者さんはバイオネーターによる治療を行いました。後半のバイオプログレッシブは希望されなかったため
前歯に隙間が残りましたが患者さんは満足されていました。ちなみに中学受験をされ志望の難関校に見事合格されました。
歯だけ治せばいいっもんじゃないと言うのが信条
下の歯が見えない子
つまり過蓋咬合とか2級咬合とか呼ばれる子は
頭が悪くなると確実に言う事はできないかもしれませんが
それをしっかり治療した子供が成績が良いと言う事は
実感として感じている。
これだけは自信を持って言えると思います。
子供の矯正と言うと何とか前歯を並べようとします。
乳歯にブラケットを着けたり
シリコンの既成装置を着けたりいろいろやられています。
〇〇シールドと言う装置も一見よさそうで
動くのは歯だけという欠点があります。
自分の考える歯科医療は歯を並べるだけにとどまらず
全身の健康を増進するものでなければならないと考えています。
機能矯正を受けていただいたお子さんが身体的にも学力的にも
しっかり成長されていることに
機能矯正医として歯科医としても喜びを感じています。